想ー像ーラジオー。

この文章を書くのは時間がかかるなあと思っていたのですが。

いとうせいこうさんに、はんこを納品しました。ようやく…。
いろいろたどってみたら、このはんこを彫ったのはちょうど2年前の今日。3/15だった。

文字DJ

そして二年前に書いた日記があります。以前のブログに載せていたものなので、こちらにあらためて、長めに再掲します。(2011/4/1のブログより)

『被災地では今でも、避難所で生活していたり。
不便な生活な中で、PCに向かったり、音楽を聴いたりする環境がなかなかない人もいるかも知れない。

だからこそいとうせいこうさんが始めたのが文字DJ。
それはまさにラジオのDJのように、twitter上で「音」を流す。
「リスナー」からのツイートをリツイートして「読む」。
「流すよ」ってせいこうさんが言う。リスナーは想像する。すると音が聴こえる。それをDJに教える。それが文字DJの基本!すごいねこれ。

私の好きなツイートをいくつか。

3月15日
■福島から「疲れちゃったよ」のリプライ。だろうと思うよ。正直、俺でさえ布団かぶってうずくまってる時間が長いから。だから、この「番組」に本音くれよ。弱音くれよ。俺も泣きながらやってるよ。

■暗闇からお送りしてます、文字DJ。茨城から「踊ってます」情報届く。好き勝手に踊ったり歌ったりしてください。これはそういう「想像力の放送」です。

3月16日
■そうそう、このラジオは「24時間ずっと心に放送」なので、なんかもう泣きたいよとか、気合い入れたいよとか、遠慮なくリプライしといて。みんなもそれ読んで。俺が寝たりしてても「放送」は君の中で続いてるんだぜ。

■余震で眠れない人たちも多いみたい。早朝から起き出す人も。じゃあ、もう一曲お送りしとくよ。俺が一曲もタイトル知らないミスチルで「今日は時代変えなくていいよ」。歌詞の具合はみんなで考えてください。きっと優しい歌だよ。

■十年後のあの町、この村のにぎわいをON AIR中。聴こえるだろ?

■泣かせやがるぜ。 RT : 急に大ボリュームびっくりしたわ。【音量注意】ぐらい知らせてよ! RT @seikoitoDJ 十年後のあの町、この村のにぎわいをON AIR中。聴こえるだろ?

■もちろん、オンエア始めたぜ。 RT : 石巻出身の者です。港の活気が聴こえます。魚介加工工場のあの臭いにおいまでします。DJせいこう、リクエストしてもいいですか。穏やかな海の静かな潮騒を、もう一度、安らかに聴いてみたい。

3月18日
■深い黙祷をお届けしたぜ。 RT : //今日の14:46には、ボリュームマックスで、最高の沈黙の時間をお願いします。

■茨城からお便りいただきました。今は音楽聞けなくても大丈夫。水戸納豆のワラがかさかさいう音、流しとくよ。 RT : @seikoitoDJ なんかまだ音楽聴く気になれません。けど文字DJはつけっぱなしにしてるよ。はやく私の好きな曲が流れないかなー。

と。。。。あげたらきりがないんですね!
素晴らしい放送の数々。
せいこうさんがこの取組を始めたとき、その日の私は、予定していた仕事がなくなって、ずいぶんと早くから家にいた。ずっとこの文字DJを追っていて、なんだかすごく感動して。そしてはんこを彫り始めた。

そうして勇気を出してせいこうさんに宛ててつぶやいてみた。
そしたらいつの間にかせいこうさんがアイコンを使ってくれていた。』

そんな日から二年。

「文藝」の2013年春季号で、いとうせいこうさんの書きおろし小説「想像ラジオ」が発表されました。
(私のブログの一文がどこかに引用されています…小さいのでよく探してみてください。笑)
しかし店舗によってはあるのかもしれませんが、あっという間に品切れとのこと?
そして先日、同社より小説が出版、発売されました。

「想像ラジオ」 いとう せいこう 著

想像すれば、聴こえるはず――。文学にしかできないことがある。「文藝」掲載時より口コミで話題を呼び、かつてない大反響を呼んだ、鎮魂と再生の物語。著者16年の沈黙がついに破られる。(河出書房新社HPより) 詳細はこちらから。

文藝が発売された日にすぐに本屋さんに行き、食い入るように読みました。
そんなに大長編の小説ではないのですが、あまりに濃厚すぎて一気には読めなかった。もったいなかったし…(貧乏性)噛み締めるように数日かけて読みました。

聞こえない声を探し求めて形のない音を無数の人に届ける人、
書くことで聞こえない声の意味をすくい取る人、
想像上の音をキャッチして反応する人。

そんな人達が物語の中には登場するんだけど。
そもそも2年前に起こった、この大きな出来事のことは、誰も想像できなかったんじゃないかと思う。

そこで生まれた、想像を越える規模の悲しみのあとに、想像が作り出した様々な人の感情、救い。

もともと作品の感想を述べるのは得意ではないんですが、この作品については、無理にでも、書く必要がある気がして。
でも本当にみなさんにも読んで欲しい。
2年も経った今でも、あの時のことを一気に思い出させてくれる本。それは決して、後ろ向きな意味合いだけではなくて。

2013年3月11日、2年経ってもまた、私は、ぼんやりとNHKが流す映像を見ているばかりだった。そしてtwitterをのぞいたら、またDJせいこうさんがつぶやいていた。

「今日、君の一日にずっと心安らぐBGMをかけてたのに気づいたかな? 朝からのことを思い出していくとわかると思うよ。もちろん今もかかってます。どうか音楽が君を守護しますように。」

ああ、なんかあのときと、私は変わっていないなあ、と、すごく思った。
ひとまず、すぐに、せいこうさんに届けようと思った。
いつも動き出す力を与えてくれる文字DJ。

まだ私は、一度も被災地に行っていないんだよなあ。
テレビでは何度もやっているけど、この目できちんと見たいと、最近よりいっそう、強く思っています。

と、書いていたら、せいこうさんがツイッターでつぶやいてくれていました。
ようやく手元に届けられて、本当に嬉しいです。

せいこうさんのツイッターの画像を拝借。

いろいろオマケ付きで送ってしまいました。
勝手にラジオ局のステッカーっぽいものもイメージしたはんこもつけたりして。笑

 

さあがんばろう、色々なことを。前に進みたい。
とどまっている人、とどまらざるを得なかった人、

どんどん進んでいる人、進まざるを得なかった人、

進んでいこうとしている人。

 

私はどの人になろうか。