【チェコ記2】20170317(金) チェコ工芸美術大学UMPRUMへ
少し間が空いてしまいましたが、「チェコ記2」再開します!
間があいちゃってもう忘れたよ!っていう方はこちらより再読できます。念のため…。
さて、この日は朝から、イラストレーターのSaki Matsumotoこと、さきちゃんが卒業し今でも制作を続けているチェコ工芸美術大学(UMPRUM)に連れて行ってもらった。
イラストレーション科、アニメーション科、製本工房やリトグラフの工房など幅広く見せてもらう。ただ金曜日は、もう気持ちが週末に向かっているので一週間の中で一番人が少ないらしい。その後月曜日に案内してもらったときは、確かに先生も生徒も圧倒的に多くみんな忙しそう。科ごとに教室があり、工房をかねているものもあれば、それぞれの工房(製本、リトグラフ、活版印刷、スクリーンプリント、リソグラフ)にも担当の先生がいて生徒の相談や作業をみるというシステム。ちなみに昼休みはとても重要なので(お昼にビール飲んでる人もいる)、尊重せずに昼休みにはみ出すような空気の読めない生徒は先生に嫌われるそう。
活版工房。おびただしい量の活字、活字。よだれが出そうでした。
いまいち何が何かわかっていないままですが、置いてあるすべてのものにドキドキしてしまいます。
さきちゃんがよく作業している外国人留学生のための部屋にも案内してもらった。
ロフトがついていて天井が高く、いすを使わないと登れないような高いところに大きな窓があった。さきちゃんは、ここからの眺めがいいんだよと言って土足のまま椅子に上がり窓によじ登った。「靴脱がなくていいよ。私も最初は脱いでたけど、他の誰も脱いでなかったんだよね」窓は二人並んで余裕で腰掛けられるくらいの幅があった。窓の外に広がる景色は…。
目の前を流れるヴルダヴァ川。橋の向こうに見えるプラハ城、オレンジ屋根の一帯。4階のこの窓からの眺めは、本当に本当に贅沢な景色だった。
プラハ旧市街広場のほど近く、ヴルダヴァ川沿いにある歴史ある大学。さきちゃんはここのイラストレーション科で学んだ。さきちゃんははじめロンドンの美大で学びはじめ、その後狭き門をくぐり抜けこの大学へ留学。徹底してチェコ語でしか話さない教授がいたり、周囲の生徒に嫌味を言われたり、うまく入り込めなかったり。当時学校に日本人はもちろんいなかったし、想像以上にネットワーク作りは難しかったのだろう。だけど滞在して2年以上経った今、学校に行けばさきちゃんはたくさんの生徒や先生に挨拶しハグされ、歓迎されている。ああ、こうやって一つ一つ、制作しながら、対話しながら、戦いながら、出会いを紡いできたんだな、この人は。と強く感じた。
あらためて、こちらがイラストレーターSaki Matsumoto(松本沙希)ちゃんの作品。
さきちゃんの描く世界は、世界中のどこにでも、あるようなないような、存在するようなしないような、森の奥の奥の方にひっそりとたたずんでいるような、あるいは実は生活のすぐそばにあるような、
そんな不思議な存在。
メルヘンとかシュールとかいうことばで片付けたくはない。
チェコでも日本でも世界中どこでも、旅をしているような軽やかさでありながら、人間らしく悩んで迷って戦うように絵を描いている人。こういう人って、他にあまりいない気がします。